世界最高峰の山、エベレスト山で、山頂の氷の融解によりこれまで雪や氷に埋もれていた遺体が多数あらわになっていることが報道された。
エベレスト山の登頂は落下する氷、不規則な地形、身を切るような寒さ、そして高山病を引き起こす標高の高さなど多くの障害物でいっぱいだ。これまで約5,000名が登頂に成功している一方で、300名ほどの人間が途中で亡くなっている。
一部の遺体は氷や雪に覆われてしまい、長年そのままの状態で放置されてきた。しかし今、気候変動により周辺の氷が融解し、複数の遺体の手足や身体があらわになっていると3月21日にBBCが報道した。
確かに、昨年ある研究グループがエベレスト山の氷の温度が例年より高いことを記録しており、4年前の研究では氷が溶けたことによりエベレスト山の中にある池が拡大していることもわかっている。しかし遺体があらわになったのは氷河の融解だけが理由ではない。ネパールのクーンブ氷河の移動も原因の一つだ。
遺体のほとんどは、エベレスト山の中でも最も危険スポットの一つ、クーンブ・アイスフォールで発見されている。そこでは氷の塊が突然崩壊し、氷河の一部が数メートルも落下することが日常茶飯事だ。2014年にはこの場所で一度に16名もの登山者が落下した氷の下敷きとなり命を落とした。
とはいえ、山から遺体を回収するには法的な制約があり非常にコストがかかるだけでなく、繊細で危険な作業となる。例えばBBCが報道するところによると、ネパールの法律では山から遺体を回収するには政府機関がその作業に関わらなくてはならない。
その上実は多くの登山者は、万が一山中で亡くなった場合にはそのまま山に居たい。と願っているのだと登山家のアラン・アーネットはBBCの取材に対して語った。
登山の最中に突然雪や氷の合間から遺体があらわになっていたら正直怖いが、山を愛していた人にとっては亡くなってもなお山に居られるのは幸せなのかもしれない。