牛の群れの中で一頭だけ突出して巨大な白黒の牛の映像がインターネット上を駆け巡っている。あまりの巨大さに、初めて画像を見た人がフォトショップ加工された写真だと思ってしまうのも頷けるが、この牛、本当に実在するのだ。
西オーストラリアの畜産農場で飼育されているホルスタイン種の「ニッカーズ」は体高194センチ、体重1.4トン。非公式ではあるがオーストラリア最大の牛だと言われている。
ホルスタイン種は比較的大きい種ではあるが、成体の平均体高は147センチ、体重680キロほどだ。しかしニッカーズはホルスタイン種の中でも特別大きい。今年10月に農場主がオークションに出した際には、全加工業者から大き過ぎるとして取引を拒否されてしまったほどだ。
牛2万頭ほどを飼育する農場主のジェフ・ピアソン氏はニッカーズが12か月の頃に400ドルで購入した。種類的にも大きくなるとは予測していたが、さすがにここまでとは予想を遥かに超えていた。7歳になったニッカーズはピアソン氏の農場のどの牛よりも大きく、体重を測るのに使用する体重計は、通常複数の牛を測るためのものを使用する。
ピアソン氏はニッカーズが明らかに他より目立って大きかったので、他の牛がもっと若いうちに加工業者へ売られていく中、どこまで大きくなるのか見てみようと手元に置いていたのだ
ニッカーズ(女性の下着)」というふざけた名前について聞かれると、ピアソン氏はその由来を話してくれた。ニッカーズが農場にやってきた頃、ブラーマン種の牛と仲良くなったのだが、その牛を農場では「ブラ」と呼んでいたため、「ブラと下着」という意味で「ニッカーズ(女性の下着)」と名付けられたらしい。名前の由来までユニークだ。
食肉処理場行きを免れたニッカーズは生涯をこの農場で他の牛たちのリーダーとして過ごすことになるようだ。実際他の牛たちはニッカーズのことをリーダーとして認めているらしく、ニッカーズの行くところ全員ついて歩き、ニッカーズにその自覚があるかは別として、良いお手本となっているそうだ。
カーズはほぼ間違いなくオーストラリアでは最大の牛だが、残念ながら世界最大ではない。世界で最も大きい牛は、イタリアで2010年に確認されたキアニーナ牛の「ベリーノ」で、体高は2メートルを超えていた。