「クリーンミート」というものをご存知だろうか。家畜から抽出した幹細胞を実験室で数週間人工的に培養して作る培養肉のことだ。培養で食肉を作った場合、従来の方法と比較して温室効果ガスを96%削減できるという研究結果もあり、環境問題研究者たちも期待している。
この「クリーンミート」が2018年末までにはレストランのメニューに登場し始めるかもしれない。
味はどうなのか?
一般消費者に受け入れられるには、当然従来の家畜肉以上とは言わなくとも、同等の味でなければならない。「Clean Protein: The Revolution that Will Reshape Your Body」の著者キャシー・フレストンと、ブルース・フリードリヒは培養肉メーカー「メンフィス・ミート」の鶏肉と鴨肉を試食し、それら製品は従来の家畜肉と見た目も味も変わらないと結論付けた。
またGood Food Instituteというクリーンミートや植物性肉代替品業者をサポートする非営利団体のCEOでもあるフリードリヒ氏は、クリーンミートは確かに従来とは全く異なる方法で製造されるが、「全くもって同じ肉」であることを消費者にわかって欲しいという。
いつ一般市場に出回るのか
クリーンミートメーカーJUST社のCEOジョシュ・テトリック氏は2018年末までに米国とアジアのレストランでチキンナゲットやソーセージ、フォアグラといった商品を提供することを目指しているとCNNに語っている。また他メーカーでも2021年頃までにはスーパーの棚にクリーンミートを並べたいと考えている。
安全性と健康面への影響は?
アメリカ食品医薬品局(FDA)は「当時提示された情報を踏まえ、適切な安全基準及び関連する規制に従って製造された培養肉であれば摂取しても安全と考えるのが合理的である」としている。
クリーンミートメーカーMosa Meat’sのCEOポスト氏は、培養肉の安全性が認められれば、食中毒の危険性を減らせるという。クリーンミートはほぼ無菌状態で生産されるからだ。
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によれば、年間4,800万人が食中毒に掛かり、128,000人が入院、内3,000人が死亡すると推定されているが、クリーンミートは汚染原因となる肉の解体作業を必要としないため、食肉からの食中毒を減らせる可能性があるのだ。
更に、クリーンミートは健康面にも貢献しそうだ。クリーンミートは筋肉細胞を培養して作られる。しかし、ハンバーガーなどに使われるパテは肉の脂肪分が味や舌触りに不可欠な要素だ。そこで、クリーンミートにオメガ3脂肪酸のような健康的な脂質を含ませることも可能だという。
消費者の反応と今後
いかにクリーンミートが消費者にとってより健康的だとしても、やはり「実験室で培養された肉」への抵抗感があることは否めない。しかし、実はアメリカ人の1/3がクリーンミートを従来の家畜肉の代わりに食べたいと考えているという調査結果もある。
その期待に応えるために課題となるのは価格だ。サンフランシスコに拠点を置く食品テクノロジー企業の”Memphis Meat’s”は、450gの牛肉を作るのに$2,400(約26万円)のコストをかける必要があった。
しかし、技術がより合理化されることで徐々に価格は下がってきており、2021年には初のクリーンミート商品を市場に送り出せると考えている。
実は、ビル・ゲイツやリチャード・ブランソンらもこの”Memphis Meat’s”に巨額の投資をしている。アメリカ合衆国農務省は2018年には肉消費量が過去最高記録になると予測しており、また世界的にも肉の消費量が増加しつつある今、現行の食肉供給では間に合わないのだ。
イギリスの元首相チャーチルは、1931年に既に培養肉のことについて予測している。
チャーチルは「鳥の手羽先や胸肉を食べるために一匹丸ごと育てるのは合理的ではない」と述べていたそうだ。それから86年、やっとチャーチルの夢の実現に近付いたのだ。
【ソース:INDEPENDENT】
【ソース:CNN International】