もしかすると今後10年以内に癌の早期発見率が各段に上がり、生存率が高まるかもしれない。
体内の癌発症を感知すると、癌の初期サインとして皮膚に人工のほくろが現われるインプラントを科学者らが開発したのだ。
癌を発症すると体内のカルシウムレベルが急増する。そのため皮膚下に埋め込まれた小さなインプラントが常に体内のカルシウムレベルをモニタリングし、異常なカルシウムレベルの急増が感知された際にこのインプラントがメラニン生成のトリガーとなる仕組みだ。結果、インプラントをした皮膚にほくろが現われるというわけだ。
チューリッヒ工科大学のスイス人科学者マーティン・フッセネガー教授は、このインプラント装置により、最も一般的な前立腺がん、肺がん、結腸がん、乳がんの4つの癌を腫瘍発生のかなり早期の段階で発見できると話す。
癌患者は、発見が早ければ早いほど癌を克服できる可能性が高くなる。例えば、乳がんステージ1の女性の5年生存率はほぼ100%だが、ステージ4になると5年生存率がたった22%にまで下がる。
フッセネガー教授は、インプラントは10年以内に実用化可能だと考えている。
「現在のところ、人々が病院に行くのは大抵腫瘍が問題を起こし始めてからです。しかし、残念ながらその段階では既に手遅れなケースが多いのです。」
「早期発見により、癌克服の可能性は大幅に向上します。」
「インプラント保有者は、ほくろが現われたら精密検査を受けるために病院に行くべきです。ほくろが現われたからといって、その人がすぐに亡くなるということではありません。」
イギリスでは毎年約19万人が前立腺がん、肺がん、結腸がん、乳がんに罹患し、内7,2000人が亡くなる。(日本の2017年がん罹患数予測は約101万人、死亡予測は約37万人:国立がん研究センターデータ)しかし、早期発見が可能になることで、数千人・数万人の死亡者減に繋がることが期待されている。
ほくろは、従来の診断方法で癌が発見できる時期よりもっと前に現れることで、治療法を探す時期であることを人々に伝える、早期警告システムのような役割を果たすことになる。
特に、BRCA1やBRCA2などの乳がん感受性遺伝子変異を持つ、遺伝的に癌に罹患しやすく、通常よりも乳がんに罹患するリスクが遥かに高い人に大いに役立つと科学者たちは考えている。
とはいえ、目に見える場所にそんなインプラントをすることで毎日病のサインがないかチェックするのは相当なストレスとなるだろう。そのストレスと向き合いたくない人向けに、科学者たちは赤外線下でのみ確認できるインプラントも開発中だ。
「その場合は、定期的なチェックは医者が行うことになります。」とフッセネガー教授は付け加えた。
現在のところ、この癌初期警告システムとなる装置は人間の細胞と、ネズミ、そして豚の皮膚下でのみ臨床試験を行っているが、全ての試験において正常に機能しているという。
また研究者たちは他にも、認知症やホルモン異常などを知らせる化学物質の変化をモニタリングできるマーカーの開発の可能性に期待を寄せている。
英王立がん研究基金のキャサリン・ピックワース医師は「いつか、この『ウェアラブル技術』が癌発症の警告サインとして機能する日が来るのかもしれませんが、また研究は初期段階です。」
「癌の初期発見は癌生存率を高める最も有効的な方法です。よって、ハイリスクにある人々や寛解期にある人々をモニタリングする最良の方法を見つけることは、重要な挑戦でもあります。」と語った。
Breast Cancer Nowのリチャード・バークス医師も、「この革新的なアプローチにより、いつか乳がん罹患のハイリスクにある女性や再発の初期警告サインのフラグを立てるのに役立つでしょう。」
「乳がんの早期発見は、病による死を防ぐのに極めて重要です。よって、腫瘍を可能な限り早期に発見するための新しくかつ効果的な方法を見つけることは不可欠なのです。」
「とはいえ現段階では、全ての女性たちに定期的に検診を受け、医者にどんな些細な異変でも報告することを奨励します。」
【ソース:The Daily Telegraph】