万が一地球に迫りくる、軌道が不安定な小惑星が今アメリカに落着した場合、アメリカはまだその差し迫った危機に対処できる準備はなく、数百万人が犠牲になるとの衝撃的なNASAの報告書が明らかとなった。
「全米地球近傍天体準備戦略と行動計画」レポートはたった40m~60m幅の小惑星が未曽有の死者と破壊を招くには十分だと警告した。危機的小惑星衝突推定マップは、万が一そのような小惑星がニューヨークのど真ん中に衝突した場合の状況を示している。
結果として起きる大爆発により、マンハッタン、ブロンクス、ブルックリン、クイーンズ、ニュー・ロッデイル、ジャージーシティ、更にはスタテン・アイランド、パターソン、ニューアーク、そしてホワイトプレーンズ近郊が完全に焼け野原となる。
現在NASAは、地球に甚大な衝突被害を及ぼしかねない40m以上の物体が30万個以上太陽を周回していると推定している。
NASAの恐怖のマップは1908年にロシア上空でTNT火薬にして5-10メガトンの破壊力で大爆発を起こしたツングースカ小惑星を元に想定されている。この小惑星の爆発は地上初の原子爆弾の数百倍の威力を持ち、約2,000平方キロメートルの範囲の森林がなぎ倒されたのである。
NASAは20m以上の地球近傍天体(NEO)が1千万個以上、そして少なくとも140mはある宇宙岩石が25,000個存在すると警告する。「140m以上の巨大なNEOがアメリカ全地域または複数の大陸に甚大な被害を負わせる可能性がある」と報告書には記載されている。
「そのような物体は最低でもTNT換算60メガトンのエネルギーで衝突する。これは地球上で実験された最も強力な核兵器以上の威力である。」
「とはいえ、そうした巨大な小惑星が衝突することは非常に稀であり、また小さなNEOと比較して発見及び追跡が容易である。」
サイズ1kmまでの宇宙岩石の方がよっぽど致命的で地球規模の被害をもたらす可能性がある。しかしNASAやその他米機関は、地球に向かってまたは地球近くを飛んでくる小さな脅威一つ一つを全て探知することは出来ない。
NASA惑星防衛局のリンドリー・ジョンソン氏は「行動計画」を遂行することが小惑星の脅威に効果的に対応するための最初のステップだと語る。
「国内には小惑星衝突防止に関連する重要な科学的、技術的、および運用能力が既にある。
全米地球近傍天体準備戦略と行動計画を遂行することで、新たな小惑星衝突を探知し、効果的に対処すべく、国家の準備と国際的パートナーとの連携をおおいに強化できる。」(ジョンソン氏)
行動計画は小惑星衝突に対応するため、「小惑星衝突機」(小惑星に対し宇宙機の一部を衝突させ運動量を伝えることで小惑星の軌道を変更する手法)と「核装置」の使用を示唆している。
破城槌的な宇宙機をより小規模な小惑星に衝突させることで、地球に向かう軌道から離す計画だ。
しかし、それでは動かしきれない程の巨大小惑星については、より強力な小惑星破壊方法で対処する必要がある。
報告書には「多くのNEOはその軌道、サイズ、構成物質など知られていないものが多く、衝突防止のための技術を開発して利用するには、これら不確実性を計算に入れることが不可欠である」と書かれている。
「例えば、事前に予測されたNEOの衝突を防ぐのに適した技術は複数あると考えられており、核装置によるNEOの破壊は、それが非常に巨大であるか、または衝突までの時間が非常に短い場合にのみ有効な選択肢となるでしょう。」
現在、全米科学財団はチリ・パチョン山に建設が予定されている口径8.4mの可視光赤外線望遠鏡、大型シノプティック・サーベイ望遠鏡(Large Synoptic Survey Telescope:LSST)に深く携わっている。この強力な望遠鏡により、夜空の詳細な写真を撮影し、何かの変化や小惑星の動きなどを探知することが出来るようになるのだ。