これまで経験した最も恐ろしい、または悪夢のような状況を思い出してほしい。
今頭の中では、その記憶が次々と恐怖が迫りくるホラー映画のように再現されているはずだ。ところで、今その場面の詳細が事細かに見えているとは思うが、その時聞こえた音は覚えているだろうか。時にその場面の視覚的イメージよりも、音のほうが辛い記憶の象徴として心に刻まれることがある。
さて、今回ご紹介する古代アステカの「デス・ホイッスル」だが、これほど苦痛を感じる音もなかなかないだろう。想像してみてほしい。拷問されたかのような、背筋が凍り付くほど恐ろしい悲鳴と、野生動物の激しい鳴き声が混ざり合ったような音を。よく言えば印象的・・・ではある。
これらのなんとも恐ろしい音色を出す笛の正確な起源はまだ明確になっていないが、この楽器が発見された当初、真の目的とは全く異なり、単なる玩具として認識されていた。
一般的にこの笛は、人間の頭蓋骨を模しており、口元は歯がむき出しになっている。一見するとゴシック装飾専門店の店頭に並ぶ洒落た小道具か何かにように見えるが、シンプルなものではなく、あえて邪悪な装飾がほどこしてあるのには目的があるのだ。
その一例が1999年にメキシコシティで発掘された。笛は生贄の犠牲者と思われる、白骨化した遺体の指に握られていた。その遺体は650年程前に建設されたと思われる神殿の中で発見された。科学者らは、発見された場所から一部の笛は唸る風の音を模倣することを目的に作られたと考えていた。
なぜか15年もかけてやっと科学者らが笛の本来意図している音を出すことができた。
笛の真の目的が何であったにせよ、少なくとも誰かが意図して悪夢のような叫び声を人々に聞かせたかったということはわかる。
Arnd Adje Both氏は、1999年に発見された笛が生み出す周波数を最初に発見した、音楽考古学における古代ヒスパニック専門家だ。
Both氏は、このタイプの楽器はヒーリングの儀式と、生贄の儀式または他よりもっと邪悪な儀式で使われていた可能性があるという。
た動画ではこの笛について、部族間戦争で使われていたとの説明もある。
この悲痛な叫び声のような笛の音は、笛一つだけでも不気味だがこれを100名以上の戦士たちが一斉に吹きながら行進することで、相手部族に対し精神的ダメージを与えていたというのだ。動画には100人が一斉に笛を吹いた時のシミュレーション音も録音されているが、正に「悪夢」というにふさわしい音だ。
笛の真の起源は我々には知る由もないが、今の時代の人々に、古代人に関する深い理解と知識を与えてくれるのはこういった類の道具の発見である。彼らが知っていた世界からは劇的に変わったかもしれないが、彼らの遺した遺産は、それが善であれ悪であれ、彼らの身体が朽ちた後もずっと残っていくのだ。
もしかしたら、今から数百年・数千年後の文明の人々が、今の世界の人間からしたら当たり前の物について大騒ぎしているのかもしれない。
【ソース:Disclose.tv】