短期間のファスティング(断食)による健康メリットは研究で認められているが、なんとある夫婦は基本的に不食で生活し、「宇宙からの栄養分」で生命を維持できると驚きの主張をしているのだ。
カミラ・カステロ(34)とアカヒ・リカルド(36)はいわゆる「ブレザリアン」だ。(基本的にほとんど食事を摂らず、空気・水・太陽の光など自然からのエネルギーだけで生きていけると信じている人のこと。)二人は週に3回しか食事を摂らず、それも1回につき果物一切れや野菜のスープストックのみといった食事内容だ。
同様の主張は過去にも嘲りと警鐘の対象として注目を浴びてきた。
「ブリザリアン」は、1999年にスコットランド北西部の山で異常に痩せ衰えた遺体で発見されたヴェリティ・リン(享年49)を含む、数人の死亡と関連があるとされている。ヴェリティ・リンの遺体のそばには、彼女の21日間の絶食の日記と、ブリザリアニズムの教祖であるジャスムヒーンの著書があったという。
オーストラリア出身のエレン・グレーブ、ことジャスムヒーン自身、実は不食または微量の食事しかとらない生活の危険性について警鐘を鳴らしていた。
「きちんと身体の準備が出来ていない状態で、自身の心の声を聞かずにこの21日間のプロセスを進めると多くの問題を引き起こします。異常な体重減少や、最悪の場合死を招きます。」と自身の著書で述べている。
ジャスムヒーンはAustralia’s 60 Minutesというニュース番組で、自身の主張を証明するために公開断食を行ったことがあるが、最後の7日間を残したところで、彼女に脱水と体重減少、ろれつが回らなくなるなどの症状が出たため番組の医者により断食の続行を中止した経緯がある。
そうしたことがあるにも関わらず、カステロとリカルド夫妻は空腹がどんなものだったかもう覚えていないという。二人は、「宇宙と自身の中に存在するエネルギー」によって生かされているという。
「人間は呼吸により、全ての物に宿るエネルギーと繋がることさえ出来れば、簡単に不食でも生きていけます。」とカステロは言う。
「3年間、アカヒと私は何も食べていません。たまに人との集まりなどで食べたり、または果物を味わいたい時に食べるくらいです。」
なんとカステロは、妊娠中もブリザリアン式を貫き、光だけを自身のエネルギー源とし、全く食べなかったというのだ。それでも妊娠中の3回の血液検査に問題はなく、健康な男の子を出産したという。
摂食障害の専門家、ディー・ドーソン氏はなぜ人々が、食事が必要ないと信じ込んでしまうのかについて見識をもった説明をしてくれたことがある。
「ブリザリアニズムは嘘ですが、ブリザリアンたちは惑わされているのです。」と彼女はthe Guardianに語った。
ブリザリアンの実践者たちは、肥満に悩まされている人同様、自分たちが食べたものを見過ごしがちなのだと彼女は指摘する。
彼女の診察室にやってくる肥満の患者は全員、「先生、1週間何も食べていないのに体重が減らないの。どうして?」と聞いてくるという。しかし、よくよく朝食や昼食に食べた物を聞いてみると、トースト3枚だの、ソーセージとポテトチップだの、トータルすると1日2,000キロカロリーは摂取しているという。
一方でカステロが妊娠中「一切食べなかった」というのも、言葉のあやで、実際は「人との集まりなどで5回しか食べていない」などと言っていることから「ほとんど食べていない」という意味なのだろう。
夫婦には5歳の息子と2歳の娘がいるが、子供たちにはブリザリアン式の生活は強いていないという。子供たちはブリザリアニズムについても、宇宙と自身の中に存在するエネルギーについても知っているが、夫婦は子供たちが食べたいものをジュースでも野菜でもピザでもアイスでも食べさせているという。
「私たちは子供たちに色々な味を知って欲しいし、食べ物と健全な関係を築いてほしい。今子供たちにブリザリアニズムを強要することはフェアではありません。もしかしたら、成長するにつれ、自分たちでブリザリアン式を実践していく可能性はあるかもしれませんが。」(夫婦)
二人は2005年に出会い、2008年に初めてブリザリアニズムを知った。二人は徐々にベジタリアン、ビーガン、フルータリアン(果食主義)と移行していき、最終的にブリザリアンとなった。
リカルド氏は食べ物への未練や依存から解放されたことで、当然生活費が抑えられ、旅行などほかのことに使え、また人生で何を欲しているのかはっきりと分かるようになったと語る。何も、一生食べないというのではなく、宇宙の栄養源を理解しているということだと主張する。
しかし、もちろんイギリスのNHS (National Health Service:国民保険サービス)は「健康を保つためには健康的でバランスの取れた食事を摂ることが重要。」と主張する。
NHSは果物、野菜、炭水化物、乳製品またはそれに代わるもの、蛋白質、不飽和脂肪酸と、多量の水分をバランスよく摂取することを推奨している。
くれぐれも安易に不食を始めようなどとは思わないことだ。
【ソースːThe Independent】