見聞録21 アブダクションケースの再考証~ヒル夫妻事件①~

見聞録21 アブダクションケースの再考証~ヒル夫妻事件①~

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UFO情報は常にアメリカから発信されてきた

戦後、Flying Saucer=空飛ぶ円盤(現在ではUFO)がアメリカで目撃されるようになってから常に情報の発信源はアメリカであった。Flying Saucerの語源になった事件は今から71年も前、1947 年6月24日に起こった。米・ワシントン州のレイニア山でケネス・アーノルドが9機の謎の編隊に遭遇してから目撃報告は一般市民、軍事関係者にも広がっていった。1950年代に入るとFlying Saucerは宇宙からやってくるものであり、その搭乗員と会った、乗った、他の惑星に行ったという説、「コンタクト・ストーリー」が世間を賑わせた。この最初期の事件も米・カリフォルニア州で起こったが、これがアダムスキー型円盤でも有名なジョージ・アダムスキーによる金星人との会見である。以後、同じような体験をしたという「コンタクティ」たちがアメリカを中心に全世界に現れた。

 

 

:アダムスキーによる最初の体験記「Flying Saucers Have Landed」

 

 

1950年代、異星人は友好的な存在だった

コンタクト・ストーリーに登場する異星人たちは人間と全く同じ外見であり、道徳的にも優れ、地球人の模範となるような存在として紹介されてきた。異星人たちは特定の地球人を選んでコンタクトし、メッセージを伝えたが、それらの多くは反核や地球を滅亡から救うためという理由であることから、異星人は地球人に対して友好的であり、当時は異星人性善説が主流だったとも言える。一方、当時からすでに行われていた米空軍による「ブルーブック」等の歴代UFO調査ではこれらのコンタクト・ストーリー的な報告は「良質なものではない」として別なファイルに放り込まれていたことが当時の機関長だったエドワード・ルッペルト大尉がその著書「The Report on Unidentified Flying Objects」(未確認飛行物体に関する報告)で明らかにしている。

 

 

:左)エドワード・J.ルッペルト大尉 右)「未確認飛行物体に関する報告」の原書「The Report on Unidentified Flying Objects」の初版本。

 

 

コンタクト・ストーリーの背景には核の脅威・米ソによる冷戦がある

戦後の新たな脅威は紛れもなく「核を使った終末的な戦争」だった。それを予感させる空気がまさに米ソによる「冷戦」に集約されるだろう。コンタクト・ストーリーが受け入れられていたのはこうした不安定な世情が背景にあったからだろう。コンタクティによる「異星人たちは地球の未来を心配している。核はダメだと言っている」という分かりやすいメッセージは「冷戦時」の不安に対する反動であり、だからこそ一般受けしていったことは想像に難くない。しかし、空飛ぶ円盤に乗ってきたはずの異星人たちは、一向に一般市民の前にその姿を現さない。所詮、空飛ぶ円盤や異星人なんて、身近なことではないのだ。そう感じたのだろうか、UFO問題というよりコンタクト・ストーリーは明らかに飽きられ、下火になっていた。しかし、1960年代になると友好的だったはずの異星人が突然牙をむいたようになる。その象徴的な最初の事件もやはりアメリカで起こった。

 

ごく一般のアメリカ人が異星人に誘拐された!

1961年9月19日の夜、旅行中だったバーニー・ヒル(夫)、ベティ・ヒル(妻)が着陸した宇宙船から降りてきた異星人たちに無理矢理連れ去られ、その内部で身体検査を受ける、という衝撃的な事件が起きた。のちのアブダクション(異星人による誘拐)ケースの最初の事件だ。ヒル夫妻はUFO研究団体やオカルト団体、特殊な宗教等に属してはいない、ごく一般的なアメリカ人だったことはUFOや異星人を肯定的に捉えてきた人々に大きな衝撃を与えた。また、その体験記(原題:THE INTERRUPTED JOURNEY)の著者はヒル夫妻ではなく、ジョージ・A・フラーという当時から第一線で活躍するジャーナリストであり、第三者的な立場から発表されたことは意義あることだった。コンタクティたちの体験記は多くが自伝的で、第三者が裏付けることが出来ない内容がほとんどだった。さらにヒル夫妻の体験を裏付け、二人を診察し、温かく見守り治療したベンジャミン・サイモン医学博士が実名で序文を書いたことも大きな助けになったことは間違いないだろう。

 

 

:左)「宇宙誘拐」ヒル夫妻の中断された旅

 

 

ヒル夫妻を誘拐したのはグレイタイプではない

現代では異星人が無条件に友好的な存在であると信じている人は決して多くはないだろう。それはヒル夫妻事件後に異星人に誘拐されたという人々、すなわち「アブダクティ」が数多く現れ、その体験が1961年以降認知されていったからだ。その影響は大きく、現代のテレビや漫画、映画等にも現れている。地球人を誘拐する異星人は、恐怖の対象そのものになっている。その理由の一つは異星人の姿が地球人と全く異なるからだ。その外見は1950年代に形成された友好的で反核、地球に対する愛に満ち溢れた地球人と同じ姿ではない。現代では誘拐する異星人=グレイという図式が成り立つほどの固定化されたイメージが付いている。その源流は間違いなくヒル夫妻のアブダクションケースと言えるだろう。しかし、ヒル夫妻が会ったのはグレイタイプとは全く似つかない姿だったのだ。この出発点を改めて検証してアブダクションケースの再検証をしていこう。

以下次号。

 

 

参考文献
宇宙誘拐 ヒル夫妻の中断された旅(1982)ジョン・A・フラー著 角川文庫

日本UFO調査・普及機構
代表 加藤純一
公式ホームページ
講演のご依頼などはTwitterで?@UFO_Jun
電子書籍「UFO?飛翔体 遭遇とその軌跡」

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