見聞録6「異星人の姿② グレイタイプの始祖・ビジターの正体とは」

見聞録6「異星人の姿② グレイタイプの始祖・ビジターの正体とは」

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著名小説家が異星人に誘拐された?

ハリウッド映画大ヒット作「デイ・アフター・トゥモロー」の製作陣が参考にしたとされる「The Coming Global Superstorm」や、ホラー小説「ウルフェン」、「ラスト・ヴァンパイア」などで知られるアメリカの著名な作家であるホイットリー・ストリーバーは、謎の生命体に誘拐された体験記「コミュニオン」を1987年に発表した。当時すでに有名であった作家が実名で恐怖に満ちた体験を発表したことは世界中に大きな衝撃を与えたが、それはUFO研究界にとっても同様であった。

 

ビジターの登場と衝撃

特にこれから挙げる2点はその後の異星人の姿やイメージについての方向性を決定付けたとも言える重要な要素だ。まず1つ目は表紙にある不気味な生命体の姿。ホイットリー・ストリーバーは著書の中でこの生命体を「ビジター」と呼んでいるが、読者の皆さんも異星人といえば、このビジターの姿を思い浮かべる方も多いだろう。そして、2つ目の重要なポイントは、この「ビジター」たちは地球人を誘拐している、という衝撃の内容だ。著名作家とはいえ、一般人が突然「ビジター」に誘拐され、その後も何度となく訪問を受けていくという信じ難い体験は、日常の延長上であるが故のリアルさがある。結局この体験記は累計300万部も売れ、さらに映画化によって多くの人たちに影響を与えることになった。

 

ビジターは異星人ではない??

現在、「ビジター」の姿は「グレイタイプ」の異星人と混同されているが、元を辿ればグレイタイプの原型は「ビジター」だと言えるだろう。また、私がかつて実施していた大学でのUFO講義で学生たちに描いてもらった異星人のイラストの多くはまさにこの姿であり、イメージ上での浸透ぶりに驚いたことがある。しかし、改めて「コミュニオン」を読み返してみると、ホイットリー・ストリーバーは「ビジター」を異星人だとは断定していないことがわかる。異星人による誘拐事件の特徴は、UFOを見た、UFOの内部でテクノロジーを見た、彼らの惑星に連れて行かれた等の核心に迫るような体験がベースにある。しかし、ホイットリー・ストリーバーはそれらの体験を全くしていないどころか、登場するビジターたちも「他の惑星から来た」と明かすこともない。著書ではホイットリー・ストリーバーが空中を飛ぶ、突然部屋にビジターがいた、不思議な部屋に連れて行かれた、等の自分の目で見た生々しい体験の描写と、恐怖に満ちた心の動きで占められているだけだ。とすると、一体どこでビジターたちはグレイタイプの異星人やUFOと結びつけられていったのだろうか?

 

謎の邦訳の副題

原書と邦訳を見比べると、タイトルにその謎を解く鍵があった。原書では「Communion – A True Story」とある。ホイットリー・ストリーバーはビジターとの魂の交流を大きなテーマとして描いており、それが宗教用語の「聖餐(せいさん)」や「交わり」を現す「コミュニオン」というタイトルに繋がったものと推測できる。しかし、邦訳のような「異星人遭遇全記録」といったそのものズバリの表現は原書のどこにもなく、後に出たペーパーバック版のまえがきにも補足的に「Encounters with the Unknown」と付け加えられてはいるが、「未知のものとの遭遇」であり、やはり邦訳のような断定的表現ではない。そもそも著者本人はビジターを「異星人」と表現していないのにもかかわらず、なぜ日本ではこんな副題をつけたのだろうか?原書のイラストとは全く違う姿とイメージを固定する副題をセットで見た当時の日本人の読者はどう感じただろうか?


真実はどこに?

これと同じような「事実とは異なるミスリード」は、戦後のUFO研究界で繰り返されてきた負の歴史である。例えば戦後UFOの始祖たる事件、「空飛ぶ円盤=Flying Saucer」という用語を生み出した事件でも目撃者のケネス・アーノルド自身は円盤だけではなく、ブーメラン型のような物体に遭遇していることを後の著書で明らかにしている。しかし、用語だけが一人歩きをして当時世界中で「円盤状の物体」が目撃されたのはなぜだろうか…。さて、ホイットリー・ストリーバーの体験の余波は思いがけない広がりを見せた。それは「私もビジターの訪問を受けた!誘拐された!」と主張する人たちからの手紙が数多く届いたからだ。それらの真偽はともかくビジターによる訪問や誘拐を受けた体験者たちを名乗り出させるきっかけになったという意味でこの事件が与えた影響は大きい。しかし、UFO研究の立場からすると、ホイットリー・ストリーバーの体験で最も重要で注意が必要なポイントがある。それは、「UFOとの遭遇を経ずにこれらを体験している」という事実である。実はこれは全く新たなパターンであり、発表からすでに30年経った今でもUFO研究者たちを困惑させている問題でもあるのだ。何しろ肝心のUFOが登場しないのだから…。

 

<参考文献>
・WHITLEY STRIEBER(1987)『Communion – A True Story』
・ホイットリー・ストリーバー(1994)「コミュニオン 異星人遭遇全記録」南山宏訳 扶桑社

 

日本UFO調査・普及機構
代表 加藤純一
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電子書籍「UFO?飛翔体 遭遇とその軌跡」

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