【第10回】「懐に飛び込む!」の一か条 前編

【第10回】「懐に飛び込む!」の一か条 前編

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私の著書「熊本の怖い話」には様々な熊本の名所が出て来る。

誰もが知る処に知らない話がある…、がキャッチフレーズでもある。

 

しかし特攻隊の基地が熊本にもあったことは、県民もほとんど知らない。

 

怖い話シリーズも「広島の怖い話」「東北の怖い話」「北海道の怖い話」と続き、「熊本の怖い話」で4作目になり、
また郷里ということもあり、自信もあったし期待もされていた。さらに実話取材のために分刻みで色んな人に会った。
(各著書のタイトルをクリックで詳細ページへ移動します)

 

実は「熊本の怖い話」の第1話目は、現在の「田原坂~湧き出る抜刀隊の霊」ではなく、
それは別の話が収録される予定だった。その1話目こそが特攻隊の基地の話だったのだ。

 

入稿36話のあと、いつもの出版社の社長から連絡があり、珍しく言われた。

「8話ほど差し替えしてもらいたい。霊の話ではない『怖い話』は困る。
せめてあと5話追加できないか。あと1週間でできますか?」

私はこれには相当困った。
実は1話目は「花房飛行場、身代わりになった特攻兵」(仮題)だったのだ。

これは入稿直前まで90歳の元少年飛行兵に霊の話というより空襲でリアルに怖い話を描いた。
機銃掃射で狙い撃ちにされたり、250kg爆弾を隠れていた茂みに落とされたり。
この方は語り部であり、どの人もこの表現力に引き込まれる。

しかし、この話に霊は出ない。

 

実際30名以上戦友が亡くなり、その夜油を巻いて火をくべ、骨になるまで一晩中燃やし続けた時には、
黒焦げの手足がにょきっと出たりして、17歳の飛行兵には衝撃の思い出だが、霊とは違う。

 

次の日に米軍のグラマンに狙い撃ちされた空襲で助かったことが、戦友の霊の力であったかもしれないが、
それは本の意図とは違うスピリチュアル系になってしまう。

飛行兵に電話で交渉し、「他にも戦友の霊、見たでしょうか?」と恐る恐る失敬な話をしたが
「電話でしか話してない人にそんなことは言えん」といかにも熊本の気質を持った方で、交渉は難航した。

だがあることに気づき、この話は別の媒体で紹介しようと思いついた。

ネットのサイトに掲載すれば、全世界の人の目に留まる。

こんな体験も特攻兵の生き残りも、それが齢90歳であることも含め、
稀作品であり将来残していきたい話でもあったからだ。
戦争を知らないのはもはや子供ではない。
後期高齢者ですら知らない時代がくる。

それでこちらのパラレルわあるどのサイトで出してもらった訳だ。

その記事がコチラ「熊本の不思議なお話

 

差し替えした原稿についてはどうなったか。1週間で20話プラスして出した。
5話と言われたが、「やってやる!」という思いと、
話を削られて自信喪失もしていたし、20話の中から選んでもらえればという思いだった。

それが今の全46話になっている。

しかし、これが後になってとても意味のあることに繋がったのだった。

 

後編に続く。

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