見聞録23 アブダクションケースの再考証 ~ヒル夫妻事件③~

見聞録23 アブダクションケースの再考証 ~ヒル夫妻事件③~

with コメントはまだありません

 

ヒル夫妻を誘拐したのはグレイタイプではない

異星人による誘拐事件、アブダクション・ケースと言えば「ヒル夫妻事件」を思い出すUFOファンも多いだろう。前回指摘したように、現代ではアブダクション・ケースに登場する異星人の姿はグレイタイプに代表されるような小型で頭部が異常に大きく、黒目だけのアーモンドアイを持つ裸の生命体が主流となっている。しかし、ヒル夫妻の体験を明らかにした“永遠の古典”「THE INTERRUPTED JOURNEY(中断された旅・邦題:宇宙誘拐)」を改めて読み返すと、グレイタイプは登場しない。むしろ彼らはモンゴロイド的に見え、また、マゼラン海峡に住んでいたある部族、セルクナム族に似ていたことがわかっている。また、彼らは確かに夫のバーニー・ヒルよりも背が低かったが、その姿は人間と変わることはなく、その目には瞳があり、裸だったわけでもない。バーニーもベティも共に隊長(リーダー)と呼ぶ、いわば主人公のような相手は、制服のような黒い上下の服に首には黒いスカーフを巻いていたという。また、その他の生命体も「男たち」と表現され、青いデニムの服を着ていたようだった。つまり、裸ではなかったのだ。

 

 

隊長が明かした「目的」とは

ホラー作家ホイットリー・ストリーバーが1987年に発表した「コミュニオン(原題: Communion -A True Story)」を筆頭に、それ以降のアブダクション・ケースではその多くの事例は正直言って夢か現実かわからない状態での体験が多い。しかし、ベティの場合は彼らの乗り物の中で隊長と様々な会話を(しかも英語で!)交わしていたことが “永遠の古典”で明かされている。車から彼らの乗り物に移動させられる時は、眠っているのに歩いている状態だったが、それ以外は覚醒状態であったことも記されている。また、ホイットリー・ストリーバーをはじめ、多くのアブダクション・ケースではグレイタイプはその目的を明かさないばかりか、コミュニケーションもろくに取れない存在だ。しかし、隊長はヒル夫妻を車から連れ出す時にその目的を明かしている。それは「ちょっとした検査をしたい」ということだった。さらに、検査が終われば車に戻してあげる、と約束しているのだ。とは言ってもヒル夫妻が逆行催眠で当時の出来事を思い出し、取り乱したり、泣いたり、大声を出すのは、何をされるのかわからない、未知な体験への恐怖だったことは間違いなく、仕方のない反応だと言えるだろう。

 

 

笑う隊長、大きな本をベティに渡す

隊長が最初にこの「目的」を明かした点は、現在巷に溢れるアブダクション・ケースとは全く質が違う事件と言って良いだろう。それを如実に示しているエピソードがある。夫バーニーの検査を待っている間、ベティはこの体験はすごいことであるが、誰も信じないだろうと考え、この体験が本当に起きたことだと証明するために、証拠品をもらえるように隊長に求めたという。すると隊長は「笑った」というのだ!アブダクション・ケースに登場するグレイタイプが笑ったというのは聞いたこともない。むしろ、グレイタイプには感情がないような表現が多く、また目的すら明かさない態度はホイットリー・ストリーバーの体験以降の定番となっている。また、近年では体験の内容が過激になり、手術や解剖をされ、その際に何かを身体に埋め込まれた、もっと酷いものになると自分のクローンを作られた、自分の子供を培養装置で作られている、といった出来の悪いSF映画のような話もある。しかし、この“永遠の古典”の中で再現されているベティと隊長のやり取りは現代のアブダクション・ケースのような「暗さ」はない。車から連れ去られていくシーンは確かに読んでいて痛々しく確かに読者に恐怖を与えるが、その後の会話とそのやり取りには思わず笑ってしまうような部分がいくつもある。

 

 

本には縦書きの文字があった

さて、肝心の証拠品だが、ベティは船内で大きな本を見つけ、それを貰えるように隊長に交渉したところ、あっさりと承諾されたという!隊長はその本の中を見るようにベティに促した。そこに書かれていた文字は日本語のようで、さらに縦書きであったという。ここでも隊長は「読めそうか」と訊き、またも笑ったという。ベティも笑い、読めないと答えたまでは良かった。事態が急変したのは夫のバーニーが戻ってきた時だった。車に戻ることになり、ベティは本を携えて船内から出ようとしたが、隊長に本を取り上げられてしまったのだ。逆行催眠にもかかわらずベティはほとんど泣きそうなほど激昂して隊長に抗議した。このあたりのやり取りを読むと明らかに他のアブダクション・ケースとは一線を画す体験であることわかる。重要なのは、この体験を外部に知られたくない、という方針が急に示されたことだ。理由は不明だが、その方針によって彼らの文字が記載された証拠品である「本」を取り上げられ、さらには記憶までも消されてしまったのだ。

(以下、次号)

 

 

参考文献
「宇宙誘拐 ヒル夫妻の中断された旅」(1982)ジョン・A・フラー著 角川文庫
「コミュニオン 異星人遭遇全記録」(1994)ホイットリー・ストリーバー著 扶桑社
「A Common Sense Approach to UFOs」(1995)Betty Hill

 

 

日本UFO調査・普及機構
代表 加藤純一
公式ホームページ
講演のご依頼などはTwitterで@UFO_Jun
電子書籍「UFO 飛翔体 遭遇とその軌跡」